桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

Category [物語 ] 記事一覧

古い映画館・下

 しばらく中身のない会話をしながら、ペンギンを探していると、パンツのゴムを下側に引っ張られた。高杉も引っ張られたようで、転びそうになっている。「ねえ、パンツのお兄ちゃん達」 小さい女の子のような声で話しかけられ、後ろを振り返ると、小さなペンギンがいた。ただそのペンギンは普通のペンギンと違い、子供向けにデフォルメされたような見た目をしていた。パンツを引っ張ったのもこいつか。「高杉捕まえろ!」 私は咄...

古い映画館・中

「次は魚だな」 魚もまた凶暴なのだろうか。さっきの蛤で痛感したが、常識が通じないという事だけは忘れてはならない。改めて胸に刻み込んでいると、高杉が口を開く。「でもおかしくない? 海で魚を見た?」 高杉の一言に先程までの蛤との戦闘を思い出す。蛤ばかりに目がいっていたが、その背景に魚はいただろうか。それどころか海の中に蛤以外の生物の姿を確認できていない。魚はどこだ。 試しに高杉と海の中へ入ってみたが、...

古い映画館・上

 例えば今日の天気が雨だとする。空は雲と雫が支配し、太陽を覆い隠してしまう。例えば今日の夜は雲が多くて月が見えないとする。空を見上げても我々からは月は見えない。 今日は雨だね。今夜は月が見えないね。目に見える感想でしかない。 しかし、どれも見えないだけであって、雲の向こうでは雨が降ろうと太陽は輝き、反射して月も綺麗に輝いている。つまり目に見える事柄だけが全てではない。「そこまでは分かる?」 私の友...

昔の記憶

 これは私の物語です。 私がまだ世の中の穢れを知らず純粋な心を持ち、目に入れてもむしろ薬となってしまうほど可愛らしかった頃、家族が一人増えました。 その日の私は心の底から浮かれていました。心の中で小さな妖精達による彩り鮮やかな楽団が太鼓やラッパ、名前は知らないけれどどこかで見たことのある楽器を奏でながら歌を歌い踊っている。 「夜はまだなの! パパは何をしているの!」と、叫び散らす私をママが少し困っ...

今の記憶

 視界は光化学スモッグだかなんだかよく分からない、白く所々黒いマーブル状の霧で覆われていて自分の手さえも見えない。 もしここで何本に見える? そう目の悪い人間に向けて指を数本たてて問いかける阿呆がよく好む遊びをやったとしたら誰も答える事はできないであろう。なにせ見えぬのだから。        何故こんな場所に私がいるのか。それは何百年前の話だろうか。いや何千年前だ! と主張する奴もいる。はたまたこ...

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