桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

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趣味小説【貪欲】

どうも、今日は昔書いた趣味の範囲で書いた話です。
いい加減即興小説だけではいけないと思いまして、昔のファイルを漁っていました。
すると、公募を意識する前の文章出てきましたので、今回ブログに載せようと思いました。
オチもしょうもないです。

【貪欲】
俺が生まれたのは虫の死骸を鍋に詰め込み、灰汁がでてもお構いなしと煮詰め続け、宇宙の色に染まった汁を糞と一緒に混ぜ長年熟成させた暗黒物質のような匂いが充満する下水道だった。
生まれて数日で母は死に、沢山の兄弟は自らの足で立ち上がり旅立った。
俺もまた下水を流れる食料なのかもよくわからないような物を口にし、立ち上がれるまで成長した後に旅立った。
体は吐き気を催す匂いを発し体内には大量の病原菌を持ち運び俺は旅を続ける。生きることに疑問を持たず、手段は選ばない。いざとなれば盗みもするし、殺しだってする。
とある親子は、空腹に耐え切れず生まれたばかりの子を一切の罪悪感ももたず、さも当たり前のように喰らった。
仲間の死骸を見つければ食し、二度とそこには近づかず、雌を見つければ種を残さんと交わる。
「俺達」はそういうものだ。

下水道から一度だけ地上へ出た事がある。
生まれた場所が場所だっただけに俺の肺に入ってくる空気はとても透き通っていたが俺には気味の悪いものに思えた。
明るい光が俺の目を焼き体を焼く、たまらずに下水へ引き返し二度とあのような場所へ行くものかといきりたった。
腹が減った、こういう時に限って飯は見つからない。下水を流れるのは泥のようなブヨブヨしたよく分からないものだけだ。
空腹が理性を塗りつぶし狂いそうになるが、すんでのところで自制する。狂ってしまったならば自らの手を足を腹を噛みきって死んでしまうだろう。
恐ろしい妄想に身震いしながらも目は貪欲に食料を探し、体を常に緊張させ有事に備えている。
俺の鼻が匂いを捕らえた。何度も何度も嗅いだ仲間の死骸の美味そうな匂いだ。早く食べてやらねば。
匂いの元を辿ると、やはり仲間の死骸があった。
俺は周囲を一度確認し、危険がないことを確認した。それではいただこうか。

俺は手に噛りついた。指はコリコリしていて歯ごたえがあり噛めば噛むほど旨みが滲みでてくる。腕は指と違い肉付きがよくボリュームがある。
腕を食べつくした俺は次に脚に噛り付く。よく鍛え抜かれたその足を歯で思いっきり噛み千切り咀嚼する。
口からは唾液と血液がブレンドされた液体がしたたり落ち、より醜悪に見える。したたり落ちた液体はもちろん舐め尽した。
俺は好きなものは最後に食べる癖があった、よって腹部だけを残し、全てをしゃぶりつくした。
さあ、これからこいつの腹を歯でかっさばき、脂の乗った肉をむさぼり胃袋に詰まった溶けかけの食料を食らう。胃袋はお楽しみ袋のようなものだ、何が出てくるか分からないからな。
歯の隙間にこびりついた肉片を舌で舐め取りメインディッシュに噛りつく。
ああ、美味い!やはり腹は美味いなぁ。
ものの数秒で腹部は食べつくされ、残るは胃袋のみであるこの胃袋には何が詰まっているだろうか、この前の奴は虫が詰まっていたっけな、その前の奴はモグラだったか。
俺は一息に胃袋を噛み千切った。しかし俺は混乱した、口の中は噛むほどに甘い味が広がり、嗅いだことのない食欲をそそる匂いが鼻を抜ける。
後味に残る自然な甘みに体は次の一口を欲しがる。
それなのに目の前にある胃袋の中身は見たことのない丸みのある形をした白い物質が沢山つまっている。
美味い、確かに美味いがこれは何だ?生まれてこのかた幾星霜と様々なものを食してきたが、このような食料は初めて見た。このまま食べてもいいものか、毒かもしれないと思ったが、よくよく考えてみれば今更毒を食べたところでそれ以上に汚らしいものを沢山食べているのだ。
それに食欲には勝てない。

俺は欲に駆られた。もっとこの白い食べ物を食べたい、こいつは生前どこでこの白い食べ物を食べたのだ。もし生きていたなら場所を聞いてから殺して食べたのに。
この下水道の中にあるのか、しかしここまで歩いてきて一度も見たことがない。もしかしたら地上にある食べ物なのかもしれない。
そうなると厄介だぞ、俺は地上へ一度しか出た事がない、その一度の勇気も数秒で砕けた。もう一度地上へ出る事ができるのか、仮に出たとして白い食べ物を見つけることが出来るのか。下水道で一生を静かに終えたほうが良いのではないか?俺の本能が地上へ出るのをやめたほうがいいと訴えかける。
食欲が本能の首根っこをつかみ足からばりばりと飲み込んでしまった所で私の理性が助けにきた。食欲と目が合った理性は勇敢にも突撃しようとしたが恐怖で足がうまく動かず転んでしまい下半身を飲み込まれる。それでも理性は下半身をすて腕の力だけでで食欲から逃げる。食欲は理性の下半身を食すのに夢中で逃げる上半身に気づかない。食欲に脳の半分以上を支配され、理性が隅のほうで震えている。
俺は本能の赴くまま地上へ乗り出した。

再び地上へ飛び出した俺はすぐさま日陰に走り身を潜めた。
地上において俺は何一つ情報をもっていない、いつ敵が俺を殺しにくるか分からない。しかしいつまでたっても敵は姿を現さない。
俺は恐る恐る日陰から身を乗り出した。眩しい光に徐々に目をならし、空気に体を適応させる。
まともに動けるようになった頃、遠くに大きな建築物が見えた。地上での生活になれるまであそこを拠点としよう。
俺はその建物に何とか潜入しようとした。
建物の下に潜り込むと小さな穴が開いておりそこを歯で削って穴を広げ潜入した。
なんとか建物の中に潜入することに成功した俺は敵を警戒した。物陰から物陰へ気配を絶ち足音を立てず速やかに移動していく。
敵はどこだ。

俺は夢でも見ているのか、それともこれまでの悪食がたたって幻覚作用をもたらしているのか、目の前には大きな足がある。俺は物陰からそれを仰ぎ見る。
しかしいくら仰ぎ見ても足は終わらない。
皮膚は肌色をしていて表面には柔らかそうな短い産毛がこまかく生えている。あまりの大きさに頭が見えない。皮膚の上には鮮やかな布のような物を纏っている。
そんな不気味で巨大な怪物が二足歩行をして建物内をうろついている。
まずい、これはまずいぞ! まさか地上にこんな怪物がいるとは思ってもいなかった。欲に駆られ、のこのこと地上へ出てきてしまった俺が憎い。
逃げなければ、そう思ってはいるものの初めて見るその怪物に恐怖し物陰から飛び出すことができない。
脳を支配していた食欲は恐怖によって追い払われた。逃げようにも逃げ出せぬまま時間が過ぎていく、そうこうしている内に怪物は何かを食べ始めた。
手についている5本の指を器用に使い二本の大きな柱で白い食べ物をすくい口に運んでいる。
あの白い食べ物は……なるほどこの怪物の食料であったのか、しかし美味そうだ。
俺の中の食欲はまたムクムクと大きくなり脳を支配した。
そうだ、下水道で俺に食われたあいつが腹いっぱい食べることができたのなら俺にだって奪えるはずだ。俺は奪う為の好機をじっと待ち続けた。
どれほど時間がたっただろうか。明るかった建物内が黒く闇にそまり、怪物の口からは規則正しい呼吸音が響き動かなくなった。
どうする、ここが好機なのではないか?今なら白い食べ物を探し奪うことが出来るのではないか。
試しに一歩だけ出てみたが変化はない、さらに一歩、一歩、一歩……怪物は動かない。今だ! 
白い食べ物のある場所は匂いで追跡出来る。
分厚いザラザラしたとてつもないほど大きな袋の前まで来た。匂いはこの中からだ。きっとこの袋いっぱいに白い食べ物が入っているのだろう。湧き上がる食欲を糧に俺は力の限り爪と歯をたてた。
硬いが破くことが出来ない程ではない、しつこく何度も同じ箇所に歯を立てひっかく。しつこくしつこく何度も何度も狂ったようにカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリと。
そのかいあってか小さな小さな穴が開いた。その穴を起点に歯で袋を裂く。裂いた穴からは白い食べ物が零れだした。
やった、これで俺は二度と食べ物に困らないどころか、こんな美味しいものを独り占めできるのだ。
俺は口の中に詰め込めるだけ詰め込むと、隠れる場所を探した。
欲に駆られた俺は逃げるという選択肢がなかった。一生この建物内で怪物に見つからないように暮らしてやる。
お、いいトンネルがあるじゃないか、ここに隠れようか。
トンネルの中に踏み出そうとした俺は奥のほうで何かが横たわっているのをあざとくも見つけた。
目を凝らしよく見てみると俺の仲間だった。以前の俺であれば飯を見つけたと喜んだものだが白い食べ物を手に入れた俺には死骸以上の価値はない。
しかし気になるのは何故そこで死んでいるのかということだ、俺と同じく白い食べ物を盗みにきたのだろうか。
もしかすると怪物の罠かもしれないな、怪物め俺はひっかかりはせんぞ! 踏み出しかけた足を引き、他の隠れられそうな所を俺は探し続けた。

それから俺は毎日盗み奪い続けた。昼は怪物が歩き回り危険なのでじっと息を潜め、夜になると白い食べ物を住処まで運ぶ。
たまに俺以外の仲間が盗みに来たりもしたが、雄ならば殺しトンネルへ投げ捨て雌ならば住処まで案内し孕ませ、子を産んだ後に子もろとも外へ追い払った。こうして俺の子孫は外で繁栄を続けるだろう、生物としての役割もまっとう出来た。
なんて素晴らしい人生なのだ! しかし白い食べ物だけではそのうち飽きてしまいそうだな、たまには違うものを食べたい。そうだ明日探しに行こう、そして俺の人生をよりよいものにしよう。

また夜がきた。今日も盗み奪う。
白い食べ物の入った袋の前まで行くと、そこら中に円柱状の茶色い小さな粒がまばらに転がっていた。
初めて見る物体に最初は身構えてみたのだが何のアクションもないところを見ると安全なのであろう。ためしに一つ住処に持ち帰り詳しく調べてみた。
匂いは食欲をかきたてる香ばしい匂いがする、舐めてみると白い食べ物とはまた違う旨みがあった。
一口だけなら食べてもいいだろうか、いやもう少し調べてからでもいいかもしれない。なんなら俺の仲間がまた現れるのを待ってそいつに食わせてみてもいい。
ああ、でも我慢できない……。

その家の持ち主は泥棒に困っていた。実家が農家であり定期的に米が送られてくる。
その大量の米を米袋に入れて保存していたのだが、穴が開いていることに気づいた。
そこで粘着ハウスを買い仕掛けてみた。たまにひっかっかってはいるのだが米はいまだに盗まれている。
それならばと、薬入りの餌を買ってきて米袋のまわりにばら撒いた。次の日、米は盗まれてはいなかった。
家中の隅という隅を箒で掃きながら探す。やはり見つかった。

鼠の死骸が

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