桜色の人鳥

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即興小説part09【男の運命】

友人のツイッター初めて覗いたら、別人のようになってしまって落ち込んでいる私です。
私は私の知っている友人を思い返すだけです。
今の彼はもう……。

時間:15分
お題:男同士の運命
要素:温泉

【男の運命】
 数年間貯めに貯めたお金で旅行を予定、しかし彼女はいない。
 ならばどうするか、嫌々男の友人を誘うしかあるまい。
 何故彼女は出来ないのか? 町を歩けば美麗な女性と腕を組む醜悪な男が沢山いる世の中。一人くらい私のような男に惚れてくれても良いのではないか?
 しかし現実は非常に非情である。
 せめてまだ見ぬ彼女の為、今回の旅行は近場の安い温泉宿にしておこう。

 温泉宿に付くと、友人は早速売店へ向かう。こういうのは帰りに買った方が荷物の整理が楽であるというのに馬鹿な男だ。
 後ろをついていくと、珍しい香水が売ってある。しかも残りは一つ。
 この香水をつけて歩けば、もしかしたら私に惚れる者が現れるかもしれない。そしてゆくゆくは結婚し、かわいいい子供を作り、老後は二人で幸せに余生を楽しむ。
 そんなあり得るかもしれない未来を予想し、思わず香水を買ってしまった。
友人はそんな私を見て「温泉宿で早速買い物とか馬鹿か」と笑っていた。
 畜生。

「温泉と言えばお風呂でしょ」
 友人が既に裸になって仁王立ちをしながら私に宣言する。荷物の整理をしていたため私は屈んだ体制である。つまり友人の象様が頭の位置と重なり視覚的暴力を行使してくる。
 というより、部屋で裸になる意味はない。温泉まで歩かねばならないのに。
 やはりこいつは馬鹿だった。
 友人に浴衣を着せ、男風呂まで向かった。

 男風呂の中は年配の方ばかりが、その歴戦の体をおしげもなくさらけ出し、日々の疲れを湯で流し、日々の愚痴を互いに交し合っている。
 何とむさくるしい空間なのだろうか。
 我々二人はそれをみながら疲れを溜めこんでしまった。
「正直健康ランドとかにいったほうが、いい光景を見れた気がする」
 脱衣所で体を拭きながら友人は悲しそうな顔をしている。
 私もまた同じ気持ちだった。
 二人で悲しい気持ちを共有しながら廊下を歩いていると、ふと案内板に目がとまった。
 いつもなら気にもとめない案内板に注目してしまったのは、重大な見落としがあったからである。
 この温泉宿には『混浴』があった。
 友人と私は案内板に従い、楽園へと歩いた。
 
 混浴と書かれた暖簾をくぐり、脱衣所の中へ。
 我々は無言で服を脱ぎ、象様と下心をタオルという絶対的布の中へ隠しこんだ。
 ガラリと浴場への戸を紳士的に開けるとそこは露天風呂になっており、既に人が何人か見える。
 髪を整え顔をつくり、クールにホットなお湯の中へ。
 友人と並びながら経済の事や外車について語り合う。もちろん中身はスカスカで外車も持っていない。
 そこへ近づいてくる人の気配を感じるが、決してそちらを見ない。
 我々は下心等ない、ただ湯につかりたかっただけだ。という雰囲気を忘れない。
「あの……」
 可愛らしい声が聞こえた。象様よ、しばし待たれよ。今から素晴らしい光景を提供致します。
「どうしました?」
 完璧だ。振り返る角度、声の爽やかさ、さあ惚れてくれ。
 しかし、目の前にいるのは軽く髭を生やしたおじさんであった。
「あの、お隣いいかしら」
 何という事だ、よりにもよって妙に声の高いおねえだったとは。私の最高の笑顔を返してくれ。
 ああ、堅い筋肉がくっついてきて気持ち悪い。
 よく周りを見渡すと、女性は一人もいない。我らのようにそわそわしている男性か、隣にいるおねえだけだ。
 友人が汗なのか涙なのか目の下に水分がたまり流れ落ちている。私は涙だと思う。
 悲しいかな。男は皆変態だ。
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