桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

Entries

初の試みファンタジー小説&合作【いつか巡りあう、その日まで】

文字書きチャットで、星丘ルルさんと互いに文章を書きあい、一つの物語を完成させました。
互いが互いを陥れようと、殴り合うように文章を書きました。

ピンク:星丘ルル←ヒロインを殺させまいとする。
ブルー:黒木ノ桜←ヒロインか主人公を頑なに殺そうとする。

二人の文章がぶつかりあい、最後は衝撃の展開が。

【いつか巡りあう、その日まで】

 焚火の火が生き物のようにゆらゆらと揺れ、私に暗示をかけようとする。自然と眼球が炎の動きを追い、体までもが揺れているような錯覚に陥る。
 温かいその炎は戦いで疲れた身体を回復魔法と共に癒してくれる。
 だが、心の傷まで癒してくれる訳ではない。火が心を落ち着かせるとはよく言うが、では消えてしまったならどうだ? 結局一時的なものだ。火はいずれ消える。
「――ルヴァ、どうしたの?」
 先ほどモンスターにつけられた腕の傷に手を翳して回復魔法を唱えている大人しい女性――アンナは私の様子を疑問に思ってか小首を傾げながらこちらをみつめる。

 アンナもいずれ死んで私の隣から消えていなくなってしまうのだろうか? 火と同じく命もまた消えてしまうものだ。もしアンナが消えたら私に安らぎ二度と訪れない。
 勿論それは回復魔法の事だけではなくて、アンナ自身が私の癒しという意味だ。アンナは幼馴染で、私が旅に出るときも制止を振り切って着いてきた。
「わたしは、ルヴァの傍にいたいの」
 そう、鈴のような声で呟いて微笑んだ彼女との旅立ちは今でも記憶に焼きついている。

 あの頃は希望に満ちていた。悪い奴らを倒して世界を平和に導けると本気で信じていた。
 現実は違った。悪い奴らを『殺して』、いつ死んでしまうかという恐怖と戦っている。

 こんな汚い現実をアンナに見せたくなど無かった。彼女には、幸せで、優しい世界を。綺麗なものだけを見てて生きて欲しかった。
「ルヴァ」
 私を呼ぶ優しい声、どれだけ怖くとも、どれだけ無謀でも、必ず守り抜こう。
「少し疲れただけだ。アンナも疲れたろう」
 出来るだけ優しくアンナに声をかける。しかしアンナは首を横にふり、回復魔法を解かない。

 それどころかアンナは魔法の力を強めていく。身体の傷が癒される事と反対に私の心は焦っていく。
「アンナ、あまり魔法を使いすぎてはいけない」
 魔法は無限に使えるものではない。魔法を使用するものの体内エネルギーを魔力という物質に変化させて使用するのだ。すなわち、体内エネルギーが底を尽きたら、それでも尚使い続けたら。
 ――使用者は死に至る。

 ただでさえ戦闘を終えたばかりだ。アンナは平気そうな顔をしているが、汗までは隠せない。笑顔が……辛い。
 私はアンナの手を抑え込み、包み込むように抱きしめた。
「体の傷はいつか癒える、でもアンナの代わりはいないんだ」

 アンナはそんな私の言葉に驚いたように瞳を見開いたが、すぐに眉を下げて少し困ったように微笑む。まるで子供を諌める母親のように慈悲深い笑顔だ。
「わたしは、ルヴァのために存在しているから、大丈夫」

 私の為……やめてくれ。自分の存在を私の為に使わないでくれ……。
 守らなければ、アンナだけは守らなければ。
 改めてそう誓う。
 私は先程より強く、顔が見えないよう抱きしめた。
 
「ふふ、ルヴァ……苦しいよ」
 私の内に秘めた決意を知ってか知らずかアンナは笑みを含めた声色で私の背をポンポンと叩く。

 情けなくて、悔しくて、アンナが優しすぎて、泣いてしまいそうだった。
 まだ泣くわけにはいかない。まだ……。
 その時、奥の茂みが激しく揺れた。


「っ……!」
 アンナをその茂みから遠ざけるように私の背後に隠れさせて傍らに置いてあった剣を手に取る。

 頼む、風であってくれ、今は駄目なんだ。
 体力は既に尽きかけており、心は乱れ、戦える状態ではない。
 それにアンナ……もう魔力はない。
 願いは虚しく神に蹴飛ばされ、茂みからはモンスターが飛び出してきた。

 そのモンスターはこの辺りでは良く見かける低級のモンスターで、普段なら造作もなく殺す事が出来るだろう。
 しかし、今の現状を見てみろ。このようなモンスターにさえ殺されても可笑しくはない。
 それでも、アンナを守らないと。私は剣を握り締めた。

 震える両足で何とか地を蹴り飛び出す。剣を振り上げモンスターの額を狙うが……おかしい。目がぼやける。額は……どこだ。
 それでも力を振り絞って剣を下ろす。だがその先はモンスターの額ではなく、地面だった。
「っ、く……!」
 モンスターの攻撃を辛うじて避ける事は出来るがそれもいつ当たるか分からない。

 先程まで炎を見ていたせいだろうか、焦点が合わない。自らの馬鹿さ加減に嫌気がさす。
 地面を思い切り叩いてしまった為、手が痺れて痛い。
 最悪だ……。

 そして最悪に最低な不幸が遠慮もせずに私にやってくる。
 モンスターは人間には理解できない奇怪な叫び声を上げて襲い掛かってくる。
 もはや此処までか、けれど、アンナだけは逃がさなくては……!
「アンナ! 逃げろ!」

 振り返らず叫ぶ。目だけはモンスターから決して離さない。
 もし私がこいつを殺せなくても、アンナが逃げる為の時間稼ぎになれればいい。
 もう死は怖くない。死ぬのは私だから。
 震えが止まった。目も慣れてきた。手の痺れは消えないが、戦えない程ではない。
 呼吸を整え、姿勢を正す。相手の動きを冷静に観察し、隙を伺う。
 殺るなら――今だ!
 筋肉引き締め、なけなしの力を込める。これが最後の攻撃。
 アンナ――……。
 モンスターは勝ち誇った声を上げた。人間には到底理解できない言語ではあるが、喜んでいる事は嫌でも伝わってくる。
 アンナは逃げただろうか? 
 モンスターの角に赤黒い血が滴り落ちる。その先で私は腹部を貫かれた状態で宙吊りになっていた。後ろは振り向かない。かわりに私はアンナを思い、笑った。

「――我、信ずるものよ。彼の者を癒したまえ」
 今まで聴いたことの無い呪文を唱えるアンナの声。まさか、逃げてないのか。ぼやける視界でアンナの声がした方向をみつめる。
 するとそこには鮮やかな二匹のドラゴン……だろうか。視界が霞んでよくわからないが、それがアンナの周りを彩り囲んでいる。
「ルヴァに害なす者は……許さない!」

 二匹のドラゴン達は舞踊るようにモンスターを食い蝕んでいく。
 苦しそうな表情で叫んでいるようだが、もう音が聞こえない。

 そうしてドラゴン達がモンスターを喰らいつくした後、共に消えて空に溶けてゆく。
 そうして残ったのは、静寂。それと私とアンナだけだ。


「――」
 アンナが一生懸命話しかけてきてくれているが、聞こえない。
 また優しい声で「ルヴァ」って呼んでくれているのかな……。
 頬が熱いのはアンナが零した涙なのか、私が泣いているのか。

「まも、れた……」
 それだけが、幸福で。
 ああ、これが私の生きる意味だったんだ。アンナを守ること、それだけが。

 そのまま安らかに眠ろうとしたのだが、急に腹部に激痛が走る。
「ぐっ……ああああ」
 何故だ。急にどうして!
 目を開けると、アンナは手を翳していた。
 やめろ! やめろ! やめろ!
 アンナは回復魔法を唱えるのをやめない。
 もう魔力はないだろう! 死んじゃうだろ!
「やっ―ああああ」
 叫び声が「やめろ」を言わせてくれない。
「ねえ、私の存在はルヴァの為にあるんだよ」

 違う、違う、アンナの存在はアンナの為にある。決して私なんかのためじゃない。
 アンナには幸せになる権利がある。だから、だから、だから――

 さよなら――ルヴァ。
 鈴のように優しく儚い声。
 その一言を最後にアンナは……消えた。

 ただただ、その場に座り込む。傷は跡すら残さずに完治していた。
 なにが起こったのか、理解したくない。
 呆然としたままアンナの居た場所へと視線を落とすと、そこにはアンナがいつも身に着けていた深緑のスカーフが落ちていた。

 私は――『俺は』スカーフを拾い上げ、腕に巻きつけた。
 アンナの温もりがまだ残っている。
 俺はこれからどうすればいい……。
 アンナ、教えてくれ――。

 火はいずれ消え、命はいずれ終わりが来る。
 でも、思いは消えない。このぬくもりは決して消えない。
 血で濡れた剣を背中にしまいなおし、俺は旅を続ける。
 果てはない。いずれ俺も死ぬ。だから待っていてくれアンナ。

 ねえルヴァ、私の存在はルヴァの為にあったんだよ。
 なあアンナ、『私の』存在はアンナの為にあったんだ。
スポンサーサイト

*Comment

 

素敵な合作小説ですね。

なんだか共感を得てしまうところがありました。

せつない…。
  • posted by 不知火 
  • URL 
  • 2015.02/27 23:25分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

右サイドメニュー

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR