桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

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合作小説【君は星、僕は錆】

今回も星丘ルルさんと合作させて頂きました。
まず二人で同時にテーマとなる単語を出しあいました。

いさび→煙草
星丘ルル→星

と言う訳で【煙草】と【星】をテーマに物語がスタートしました。

ピンク:星丘ルル←主人公を殺すまいと話をもっていく。
ブルー:黒木ノ桜←主人公を殺そうと話をもっていく。

前回に続き、互いに蹴りあうように文章を書きあいました。
私は主人公を殺すように話をもっていくのですが、ルルさんは生かそうとします。
そんな互いの思惑を考えながら読むと楽しいかもしれません。

【君は星、僕は錆】
 深夜0時、今夜は雲ひとつなく、星が良く見える。あそこにある星はスピカだろうか。僕は星に詳しくないから良く分からない。
 煙草の煙が蛇のように星と星を繋いでいく。あれがきっと蛇座だろう。根拠はない。
 そうして蛇座を繋いでいた煙が淡く溶けて消えうせる。ああ、緩やかに空に昇っていく煙のように僕も空へと近づいてもっと傍で星を見られたらいいのに。
 届くはずのない手を伸ばし、感傷に浸る。雰囲気に酔っている自分に酔っているようだ。
 そんな宵に酔った僕の目を覚ますかのように冷たい風が頬に突き刺さる。
 軽く頬を撫で、生命の温度を実感する。僕は生きている。
 けれど、僕だけが生きていても仕方ない。煙草の煙と思い出が嫌に苦く感じる。
 目を閉じると、あいつの顔が瞼の裏に浮かぶ。悔しいがあいつは僕にとって大事な友人だったようだ。
 あいつは星のような人間だった。いつも輝いていて、いつも傍に居るのに手が届かない。……正直、羨んでしまった事も数え切れないほどある。
 輝き……今の僕は輝いているだろうか? 空の上で星達が僕を見下しているように感じる。
 そんな星達に紛れてあいつも僕を見下ろしているのだろうか。再び煙を吐き出しながら僕よりも格段に輝いている星達を睨み付ける。
 初めてあいつと出会ったのは、大学の二回生になって半年たった頃、友達のいない僕に声をかけてきた。
 見た限りあいつは僕以外にも友人が沢山居るようで、何故僕なんかに話しかけてきたのだろう。暫く思案してとある仮説にたどり着いた僕は口を開く。
 しかし、僕の中の仮説は喉を通ることなく肺の中へ引きこもった。声が出ない。そんな僕をみかねたのかあいつは笑顔で語りかけてくる。
「なあ、お前ってなんでいつも一人で居んの?」
 僕の仮説は当たっていたのだろう。同情……僕はそんなものを求めていない。
「っ、い、い……か、ら」
 恐らく伝わっていないだろう。声をかけられたのは入学式以来だった。「いいから放っておいてくれ」その言葉すら言えなかった。
 そんな簡単な短い言葉すら言えない自分が悔しくて、情けなくて。僕は肩から提げていた鞄の肩紐握る手に力を込めるとその場から立ち去ろうとそいつに背を向ける。
 後ろであいつはどんな顔をしているだろうか? すまないが僕は今のままでいい。これでさよならだ。
 その、瞬間。僕のひ弱な腕とは大違いな、男らしいしっかりとした腕が背後から回りこみ僕を抱き寄せる。
 頭が現状を理解できない。脳味噌が慌ただしく情報を整理していくが、いかんせん初めての経験。対処法が分からなかった。
 ただ一つ思う事は、僕が講義堂を出る最後の人間で良かった、という事だ。
 僕は強引に腕を振りほどき、あいつを睨み付けた。だが、あいつは空気を読むことの出来ない人種のようだ。笑顔で「びっくりしたか?」なんて聞いてくる。その笑顔が僕には眩しかった。こいつは僕とは違う。人の恨み辛み嫉妬、汚い言葉を全弾込めて撃ち込んだとして届かない。僕は自覚している。自分の心は錆びた鉄だ。一度錆びた鉄は自分では輝く事が出来ない。
 そう。自覚しているからこそ、だ。目の前のこいつの傍に居ると自分の自覚している汚い部分は勿論のこと、自分でも知らないおぞましいどろどろとした感情も全て曝け出されてしまうようで。正直なところ『恐ろしい』のだ。
 恐ろしいから僕は進まない。後ろを振り向かず後ずさりする。だがこいつはそんな僕の歩幅に合わせて近寄ってくる。心がこいつから離れる事は出来なかった。これが出会い。
 それからあいつは嫌がる僕にしつこく付きまとってきた。
 嫌だった、怖かった、恐ろしかった、心の錆が徐々に落とされていく。後に残るのは何なのか? 僕自身分からない恐怖。もし、錆しかなくて何もなかったら。からっぽだったら。僕は何なのだろう。
 けれどあいつはそんな事に構いもせずに僕を様々な所へと連れ出して、今までインターネットでしか見た事が無いようなものを見せてくれた。
 太陽に言葉に環境に、そして『あいつ』に錆は落とされていく。
 燃えている。あいつは綺麗に輝く星。
 そのとなりに輝かない僕。
 妬ましい、でも心地よい。僕は……。

 ふ、と。気がついたときには僕の目からは大粒の雨のような涙が零れ落ちていた。
 袖で涙を拭っても拭っても、濡れるばかりで一向に止まってくれやしない。

 死んでしまった。僕はまた錆びついてしまった。
 いなくなって初めて理解する。
 僕はあの時輝いていた。
 僕は鉄だった。
 錆はもうとっくに落ちていた。
 あいつの光が鉄に反射して隣で輝けていた。
 僕は……あいつがいたからこそ輝けていた。
 また錆を落としてくれ、また僕の隣で輝いてくれ、僕は一人では輝けないんだ。
 さよならなんて言ってなかった。また会おうとも言えなかった。ありがとうを言いたかった。
 今更遅いなんて知ってるんだよ。今から会いたいなんてただのエゴだ。それでもまた輝きたいから、あいつの隣にまた居たいから、だから今度は僕が会いに行く。

「なんでだよ!」
 生まれて初めてではないかというくらいの大きな声で誰に言うでもなく叫ぶ。
 ああ、僕もこんなに大きな声が出せたのか。――いや、それすらもあいつが教えてくれたのかもしれない。大声で、あいつの名前を叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
 声が枯れるまで、枯れても。僕はあいつを呼び続ける。そうしたらあいつがまた笑いながら応えてくれる気がして。

 何処かで誰かが気付いた。一際輝く星の隣に、淡く消えそうに輝く星と言うには頼りない光があった。
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