桜色の人鳥

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即興小説part13【戦場】

ここは「戦場」なり!
と言う訳で今回も即興小説です。

時間:15分
お題:鋭い暗殺者
要素:腸内洗浄

【戦場】
 あいつだ……あいつが来る。
 もう既に仲間は何人も消えた。あいつは我々の事など知ったことかとばかりに殺しを続ける。
「あいつがまた来た……」
 仲間が絶望を伝え回る。事前に知る事が出来たとして、人生を振り返り、死を恐れ、その時が来るのを怯えながら待つ事しか出来ないというのに。
 我々には善人もいれば悪人もいる。皆の為と一生懸命働き、人から憎まれるような事は一切しない。逆に皆の邪魔をし、皆から疎まれる存在。もちろん悪人は裁かれるべきだ。
 しかし皆、一生懸命今日を生きている。それを何処の誰とも知れぬあいつが命を奪っていいものか。
 初めて見た時は善人も悪人もが協力して戦う事を決めた。だがかなわなかった。
 皆気持ちを一つに出来た。
 悪人と初めて協力出来た。
 皆が皆を必要だと思った。
 そして、それをあいつは全て蹴散らした。
 生き残ったものは、後悔し、嘆き、喚き、泣き、これが最後だと安堵した。
 我々は時間をかけてやり直した。
 仲間も増え、再び繁栄し始めた頃、あいつはまた来た。
 二度目の襲来、我々は……諦めた。
 殺すなら殺せばいい。どうせ叶わない。またやり直すだけだ。好きにしてくれ。もう――どうでもいい。
 それぞれがそれぞれの思いを抱える。ただ一つ絶望という思いだけは共通して皆抱いていた。
 涙は既に枯れ、心は乾き、機械のように日々過ごす。
 それからも幾度かあいつは現れた。その度に我々は目を閉じる。
 見たくないものを見なくていいのなら目を閉じるのが賢い。
 当たり前を当たり前に実行した。
 そして今、あいつがすぐそこまで来ている。
 さあ、また目を閉じよう。
 視界が狭まり、世界が閉じていく。
 視界が水平線のようになりかけた瞬間、一人が声を上げた。
「なあ、もう一度、後一度だけ戦わないか?」
 二度と聞くことはないと、ありえないと思っていた声に思わず目を開く。
「どうせ死ぬんだったら、最後まで抵抗して、戦って、気持ち良く死ねばいいじゃないか」
 ああ、なるほど。そうだろうな、誰だって気持ちよく死にたいよな。
 でも、もう手遅れだ。
 再び目を閉じる。狭くなっていく視界の中、熱く語る仲間の背後に、あいつが……洗腸液が既に迫っているのを見た。
 すぐに何も聞こえなくなった。
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