桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

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合作小説【子供の心と扱い方】

最近日をまたいでからのブログ更新になってしまっていますね。
公募の締切のせいなのね、そうなのね
そんな中、今回は合作小説です。
公募が云々と言ってる割に合作とかしちゃってごめんね。

と言う訳で今回の協力者は【喜代貴】さんです。

ピンク:喜代貴
ブルー:黒木ノ桜

ちなみに二人で一斉に出したお題は【煙草】と【ハイテンション】でした。
互いに想定外の文章を書いていたらしく、修正が難しかったです。

【子供の心と扱い方】
 煙草がまずい。いつものように吸ってはいるのだが、美味しいと思えない。昨日までは狂ったように吸っていたのだが、今日はなぜかまずい。
 いや、なぜかというのは違うだろう。原因はわかっているのだ。原因は一言で言ってしまえば、喧嘩である。しかも十才ほど年下の子供となのだ、自分でも今思えば大人気ないと思う。テンションの高い友人いわく、「痴話喧嘩ですね!羨ましいぞこのロリコン!」らしいのだが、こいつはいつもおかしな言動を取るので無視するに限る。
 馬鹿らしいと一言でかたずけるのは簡単だ。だが実際、煙草がまずく感じている辺り、私は気にしているのだろう。私が悪かったのか、少女が悪かったのか、運が悪かったのか。あるいは運悪くお互い悪い所があったのだろう。
 ここは大人である私が折れなければいけないのだろうが、原因は私のそういうところだと少女は言っている。少女にしてみたら、その『大人だから』というのが嫌で嫌で仕様がないというのだ。ならばどうすればいいというのかとたずねても、そういう態度が嫌だという。まさに八方塞がり。
 煙草の不味さが増してイラつき、少女が怒っている原因がイマイチよくわからずイラつく。衝動のままに髪をグシャグシャと掻き回しても収まらない。

 子供というものは良くわからない。私も昔は子供であったとういうのに……その頃の感受性は鼠が荒らしたゴミをゴキブリがさらに荒らし、糞を微生物が片づけてしまった。
 どうすればあの頃の気持ちを思い出せるだろうか。この疑問は時間が解決してくれる訳でも、考えて解決する訳でもない。
 髪を掻き回したとして解決しない。
 ならばどうするか。
 解決策がないなら考えるだけ無駄だ。
 煙草をどうすれば美味しく感じるか、それを解決しよう。原因は何だ。喧嘩だ。
 疑問が疑問を呼び、結局一周して訳の分からないループの中へ巻き込まれる。
 誰か助けてはくれないか。助けてくれるものはいない。

「ジャジャーン! 呼ばれてないけどきました八神くん! おっさん、昼飯奢って!」
「呼ばれてないなら来るな。昼飯は自分の金で食え」
「だが断る! 昼飯貰うところがなくなるから!」
「私の家をエサ場にするんじゃない。真面目に働けニートが」
「僕の扱い酷い! あと僕は真面目に働いてますー、不定期だけど」
「どこが真面目だ」
 その後もゴチャゴチャと冷蔵庫を勝手に漁りながら何か言ってくるけれど、全部無視してやる。なんでこいつはイラついている時に限ってやってくるのか。

 この歳になってまで子供のような友人を見ていると腹が立つ。
 こいつはいつまでこんな生活を続けていくつもりだろうか? 私はじいさんになってまで、こいつの世話はしたくない。
 ん? 子供のような……そうかこいつが私の疑問を解決してくれるかもしれない。こいつなら少女の気持ちも子供目線で見る事が出来る……気がする。
「なあ、この前の喧嘩の事なんだが、少しいいか?」

「え、なに?キミたちまだ痴話喧嘩してるの?それともキミんとこのお嫁ちゃんとうまくいってついにゴートゥーベッドしたって いう自慢話?」
「あいつが嫁なわけないだろう手を出すなんて可能性は0だ変態」
「変態ですけどナニカ?」
「認めてるのかよ変態」
「しっかし、あの子も可哀想にねぇ……」
「とりあえず話を聞け変態。話が進まないだろう変態」
「語尾が変態になってるよ、篠原くん。さすがの僕もグサッと言葉が刺さってるから。心に」
「いいから黙って聞け」
 また話を脱線させようとするので、八神を睨みつけて無理矢理事の顛末を話し出す。その間、時折頷きながら何事か言っていたが、その時の様子を思い出しながらだったからか、上手く聞き取れなかった。まぁ、夜神の事だ、碌でもない事を言っていたのだろう。

 話を聞き終えた八神は笑顔で口を開いた。
「篠原くんは難しく考えすぎだと思うなあ。大人だから子供だからってのは一旦ドブ川にでも捨てちゃいなよ」
「近所に川などない」
「そういう所だよ篠原くん」
 難しく考え過ぎているのは分からないでもない。自覚はある。
 だが分からないのだ。私は八神のように脳味噌が軽いわけでもない。
「大人だから何て理由付けしなくても、僕らは同じ人間さ!」
 どこかのミュージカルで聞いた事があるようなセリフを恥ずかしげもなく言いのける八神は、優しい表情をしていた。

「あ、今謝りに行こうかとか思ったでしょ」
「心を読むんじゃない」
「職業病なので無理ですー。あと、キミ表情が読み取りやすいからね、いっつも無表情だから」
「なんで無表情から表情を読み取りやすいんだ。無表情は表情がない事を差すだろう」
「無表情だから、微々たる変化がわかりやすいのであーる!はい、ここテストに出ますよー」
 なにがテストだ、そんなものをやる年でもないだろうと言いたいが、そんな気力もない。いつもの調子でだんだんと話が逸れて行く事に、思わずため息が出る。どうして八神はこんなにも人の話を聞かないのか。イライラが募りに募って一回張り倒してやろうかと思うほどには機嫌が急降下していく。
「さて、昼飯も貰ったし解決のヒントも出したし、僕は帰るよー」
「は?ちょ、待て!」
 大きく膨らんだエコバッグ片手に「アディオス!」なんてにこやかに去ろうとしている八神を、柄にもなく慌てて引き止める。

「どうかした?」
 八神が振り返るが、何故引き留めたのか私にも分からない。
「エコバッグの中身を少し置いていけ。私の飯がなくなる」
 違う。こんな事を言いたいわけじゃない。
「篠原くん小食だし大丈夫でしょ」
 笑いながら去ろうとする八神の背中に向け私は小さくつぶやく。
「ありがとう」
 これが言いたかった。

 八神は少しの間目を丸くしていたがすぐに、にまりと笑う。
「うひひ! 篠原くんがお礼言うなんて珍しいねぇ? ツンデレ目指してんの?」
「目指してるわけないだろう! さっさと行け!」
「はいはい」
 ドアが閉まってもカラカラと笑い声を響かせる八神に、顔が熱くなる。今度来た時は覚えておけ、唐辛子の1000倍辛い液体入りカレーをくれてやる。……まぁ、感謝はしているが。
 その後しばらく玄関を睨みつけていたが、顔の熱がやっと冷めてきた事だ、出かけることにしよう。いつの間にかイラつきも収まっているし、少女に今の気持ちを正直に話せる、と思いたい。
 私はドアノブに手をかける。開けた瞬間に蒸し暑い空気が流れ込んで、少女はいつもの場所にいるのだろうかと、少し不安になった。

 もしいなかったら、やはり明日にすべきか。しかし明日になればどうでも良くなってしまうかもしれない。いや、こんな事ばかり考えるからいけないのだろう。
 出来るだけ何も考えず、普段通りを装っていつもの公園へ入っていった。
 しかし人影はなく、風だけが私に語りかけてくるが言語は分からない。
 少し待ってみようかと公園のベンチに座り、溜息をついた。
「ごめんな」
 生涯でもう一度聞けるかどうかという程、なさけない声が出た。
 今の謝罪に大人だとか子供だとかという感情は一切ない。
 ただ、こんなつまらない喧嘩をさせてしまって申し訳ない気持ちだけがあった。
 簡単な事だった。ただ正直に謝ればよかった。そんな事に今更気づく。
 煙草に火をつけ吸ってみる。やはりまずい。

「篠原さん!」
「みゆきちゃん……?」
 怖々と顔を上げようとして、止める。この声からして先程までいなかった少女、みゆきちゃんが目の前にいる事はわかるのだ。さっさと今の気持ちを言ってしまった方がよいのだが、どうにもみゆきちゃんの声が昨日より怒っているような気がする。
 そう思うと顔を上げるのが怖くて仕方がなく、そんな自分が本当に情けない。
 ぴたりと固まったまま動かないでいると、待ちきれなくなったのかみゆきちゃんがしゃがんで顔を覗き込んでくる。怒りを顕にした目を見て、視線を合わせれなくなって目を瞑る。情けない。
「私は、篠原さんのそういうところが嫌いです!」
「……すまない」
 キッパリと言われた言葉に、自分でも驚く程傷ついていた。それを隠そうと表情を繕う。悪いのは私なのだから、私が傷ついてどうするのだと。
「なんで篠原さんが謝るんですか!?」
「……私がみゆきちゃんに謝らなかったから、怒っているのだろう?だから……」
「違います!ぜんっぜんわかってません!」
「ぇ……」
 強く否定された今謝っている理由に、思わず目を開く。予想した通り、みゆきちゃんの顔は不機嫌そうに歪められている。しかし、言われた言葉の意味がわからない。私が謝らないから怒っていたのではないと、みゆきちゃんは言う。ならば、なぜ?
 ぐるぐると思考を巡らせていると、みゆきちゃんが溜息を吐いた。またなにかしてしまったのだろうか?わからない。

「篠原さんは考え過ぎです!」
「そんな事……」
 あっただろうか……いやまた考え過ぎていたのか。
「もっと普通に接してきてください! 私に気を使うのが嫌なんです! だからごめんなさい」
「どうしてみゆきちゃんが謝るの」
「私も悪い所があったからです。さあ、これで仲直り!」
「でも……」
「だから情けない顔はやめてください!」
 いつから私はこの子に気を使っていただろうか? いつからこの子は私が気を使っている事に気が付いていたのだろうか?
――無表情だから、微々たる変化がわかりやすいのであーる! ――
 あぁそうか、八神の言うとおりだ。子供にだってわかる事だったらしい。

「そんなに情けない顔になってるか……?」
「そうです! 今にも泣きそうです! 心配で見てられません!」
「そうか……その、みゆきちゃん、心配してくれてありがとな。私も少し気を使いすぎたみたいだ」
 力強く肯定するみゆきちゃんに、少し笑みが溢れる。そのままの勢いで少々照れながらもみゆきちゃんの頭を撫でて、八神には今度なにか奢ってやろうと思う。今回ばかりはあいつの言葉とみゆきちゃんによって解決したようなものだろうから。
「篠原さんがデレた……?」
 みゆきちゃんからポツリと発せられた言葉に、違和感を覚える。なんだろうか、こんな事をいうのは私の中では一人しか心当たりがないのだが。
「み、みゆきちゃん……?」
「はい? なんですか?」
 ニコニコと機嫌よさげに笑いながら、こちらを見る。いや、なんですかじゃなくて、みゆきちゃんは確か機械音痴だったはずだ。そんなネットの中でしか使わない言葉を知っているはずがない。
「……そのデレるって言葉、どこで知ったの?」
 嫌な予感しかしないが、むしろ一人しか思い当たらないが、恐る恐るみゆきちゃんにたずねる。
 するとみゆきちゃんは二パッとそれはそれは可愛らしい笑顔で、
「八神さんに教えてもらいました! 少し前、八神さんにどうしたら篠原さんが気を使わなくなるか相談してたんですよ!   そしたらいろいろアドバイスくれて、今日篠原さんがここにいることも教えてくれたんです!」
 「篠原さんの表情の事も教えてくれました!」と元気よく言うみゆきちゃんに若干、いや、かなり疲れた。つまりは八神は最初から全部知っていて、今日来たのも仲直りさせるためだったと、そういうことらしい。なんてわかりづらい事を。
「……八神は相変わらずだな」
「篠原さん……?」
 ポツリと呟くと、どうやら少し考えすぎたようで、みゆきちゃんが心配げにこちらを見ていた。
 なんでもない、というと、みゆきちゃんは不思議そうな顔をしていが、納得したようだ。また表情からわかったのかな、なんて少しだけ思う。
「とりあえず、晴れて仲直りしたんですから、篠原さんの遊びに行きたいところに行きましょう! レッツゴーです!」
「でも……」
「私が篠原さんの事を知りたいから行くんです! 今回の事でわかりましたが八神さんには負けてられません!」
「……そっか」
「はい!なので、篠原さんの好きな所に早く行きましょう!」
 目を輝かせながら言うみゆきちゃんに、笑みが溢れる。娘がいる父親はこんな感じなのかな、と思う。
「じゃあ、図書館に行こうか」
「おお! 篠原さんは本が好きなんですね!」
 興奮気味なみゆきちゃんを見て、笑いながら頷き返す。なんだか照れくさいが、喧嘩する前よりタバコもうまいし、イライラがなくてすっきりとした気分だ。
 こんな日が毎日続くといいなと、みゆきちゃんを見ると意味もなく頬が緩んだ。
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