桜色の人鳥

適当理論と小説置き場。たまに日記。小説を読むときはカテゴリ「目次」から。

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即興小説part22【遅刻と調和】

時間:15分
お題:調和のとれた電車
要素:聖書

【遅刻と調和】
 朝から太陽は忙しそうに顔を覗かせ、私の睡眠の邪魔をする。カーテンの隙間から光が差し込み瞼の裏からチカチカとやかましい。イライラしながら上体を起こし時間の確認をすると、既に会社に遅刻。胃がきりきりと痛む。何故昨日目覚ましをセットし忘れたのか……。自分にもイライラしながら着替えをを済ませ、どうせ遅刻ならと朝飯をゆっくり優雅に食す。
 
 電車の時間に合わせ外に出る。いつもより遅い時間とはいえ、一般的にはまだ早朝と呼ばれる時間である。それゆえに出勤ラッシュはまだ止まず、人の波はいまだに荒れ狂っている。駅で切符を購入し、電車を少しばかり待つ。ふと、隣の人の肩が触れ、反射的に謝った。
「申し訳ありません」
隣にいた女性は笑顔で「いえいえ」と頭を下げてきた。女性の手元には何故か聖書が握られていた。今時聖書を片手に歩いているとは、恐らく相当な信者なのだろう。そんな事を考えていると、女性は私に不意に話しかけてきた。
「何かイライラしていますか?」
顔に出ていたのだろうか? もしそうなら申し訳ない事をした。私は詳細を省き、朝寝坊をしたことを伝えた。すると女性は諭すように「それは運命なのです。恐らく神は調和をはかったのでしょう」と訳の分からない事を言った。

 電車が目の前に止まり、ドアが開く。私は波に揉まれながら中に流れ込む。電車の中には私のように朝寝坊でもしたのか、そわそわと落ち着かない人間、携帯をいじっている人間、足元のおぼつかぬ年寄。様々な人間がお互いを牽制しあいながら乗っていた。
 調和か……。なるほど、もし初めの電車に私が乗っていたなら調和が乱れ、何かしらに災難に見舞われていたのかもしれない。そう考えると、彼女に言っていたことも理解できないでもないな。
 だが遅刻も災難だ。
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