桜色の人鳥

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即興小説part24【素朴な町】

お題:素朴な町
時間:15分

 私について何か述べろと言われたら、平凡で素朴である事以外には何もない。実際そこまで魅力的な人間というものがこの世界にどれだけいるのかを考えた時、私のように平凡な人間の方が多いだろう。さらに言うなら私の住む町の住人も平凡で素朴だ。挨拶をすれば挨拶を返し、仕事の時間がくれば仕事に行く。別の言い方もあるかもしれない。例えば皆優しいとか。
 今日の朝も素朴な町にふさわしい平凡な晴れであった。仕事場に急ぐ人の波を押し返し、時間の波に背中を押される。途中で同僚にであい挨拶をかわすと、同僚は笑顔で返してくれた。何と素朴で優しい仲間であろうか。仕事場につくとさっそく血なまぐさい臭いが鼻につく。常備されているマスクを二つてにとり、一つはポケット、もう片方は顔にかけた。
 奥の部屋に入室すると、手術台の上に禿げた中年男性が縛り付けられていて、周りには血まみれの同僚達。
「今日はどこからだい?」
 私は同僚にたずねた。すると一番手前の同僚が振り向いて私に今日の仕事を解説してくれる。
「ああ、今回は地下鉄だよ。ほら、最近はそういうのが多いだろう? 先週の分もあわせるとこれで3人目さ」
「でも私達の給料は増えるし、皆幸せになれるから嬉しい事じゃないか」
「そうかもしれないね。じゃあ君は頭を切り取ってくれるかな?」
 私は「分かった」と返事をし、電動鋸を手に取った。トリガーをひくとけたたましい理性を削るような音が響く。それを縛られている男性の首に押し当て、丁寧にきっていった。隣の同僚が飛び出た血をホースで吸い込んでくれるからありがたい。最近はこういう風に気を使ってくれる子が少ないな。
 すべての作業が完了し、男性の体はパーツごとに分けられトラックで肉屋に運んだ。こうして私達の町はまた素朴な毎日を繰り返す事が出来る。
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