桜色の人鳥

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即興小説part25【早すぎた彼】

お題と要素の必要性を疑ってしまう文章になった理由として
何も思いつきませんでした(半ギレ)

時間:15分
お題:早すぎた彼
要素:主人公が人殺し

 鼠も知らぬ程に深くて不快な地下の空間にて私は男を一人殺してしまった。殺した事自体に意味はないのだと妙に背の高い爺は言う。確かにそれもそうだと思えば私の心も幾分か軽いものになる。
 目の前で死んでいる男について思い出せるのは私が首に斧を振り落した瞬間の笑顔だけであり、それ以外の思い出は一切ない。いわば他人のようなものだったのだが殺した今となってはどうしたことか長年仲良くしていた親友のようにも感じられる。それは最後の笑顔がとても無邪気で死ぬ瞬間に見せる顔ではなかったからだろうか。
 斧を壁にたてかけ地面の血を雑巾で拭いてみるがあまりの血の量に雑巾では拭ききれない。
「モップを貸してくれないか?」
 私は爺に向かって手を差し出した。だが爺は首をふって私の言葉に応じない。
「モップを貸してくれないか?」
 もう一度聞いてみるがやはり爺は私の言葉に耳を貸す気はないようだった。私は頭にきて爺に中指を立てて最後に叫んでやった。
「自分で片付けやがれ!」
 自分の気持ちを爆発させそれをそのまま口に出すのは気持ちがいいものだ。爺も怯えてしまっている。ざまあみやがれ。
 私は落ちている頭を拾い上げ爺に投げた。爺は落としそうになりながらもその頭を必死に掴み取り自分の服で顔を洗い始める。よくもまあ汚い血を汚い服で洗うものだ。意味がないではないか。
 意味がないと言えばもう一つある。私がこの男を殺した事に意味はないと爺が言っていた。それ以前は人の命は平等だとも言っていた事を思いだす。それならば誰を殺したところでそれに意味はないのだろう。もちろん罪も存在しない。
 いまだに頭を洗い続ける爺に近寄り私はもう一度だけ会話を試みた。
「罪の意識というものは存在するのかい?」
 すると爺は初めて口を開き私に言葉を返してくれた。
「もちろんあるとも」
「では私に対して罪の意識は?」
「もちろんない」
「そうか」
 それを聞いて私は安心した。壁に立てかけておいた斧に再び手を伸ばし、爺の首を横なぎに切り落とす。一度では切りきれず床に倒れた爺の首に何度も斧を振り下ろした。血がはねて私の顔にあたるがこれは後で洗い流せばいい。
 誰かこの爺のように頭を洗ってくれる者がいればいいのだが今のところ私以外に生きている人間は見当たらない。全てが終わった今なら外に出てもいいだろう。もう怒る人もいないのだから。
 地上に出たらまずは友人でも作ってみようか。
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